ソルフェージュって?ピアノは上達するのか?

ソルフェージュ

まだ5月だと言うのに、もう初夏の訪れを感じます。

先日また勉強会に行き、未就学児や小学生のソルフェージュ導入の話になりました。私はピアノを教えながら、音楽科高校・音大受験生にソルフェージュを教えてきましたが、中学から初めて始める方も少なくなく、軌道にのせるまで大変なこともありました。幼少からソルフェージュの導入的なことをしていたら上手く繋げられるのではと思うことがたくさんありましたが、実際自分の教室はどうだろうかと考える機会になりました。今回は、ソルフェージュとは具体的に何をするのかということから、何のためにするのか、演奏にもたらす効果、また、ピアノを上手になりたい未就学、小学生くらいの方のためのソルフェージュの導入についても触れたいと思います。

ソルフェージュとは

音楽科高校や音楽大学を受験したいと思った際に、入試科目に「ソルフェージュ」とあり、「なにそれ?」と思った方もいるかもしれません。

ソルフェージュとは、楽器を演奏する上で必要な、音楽の基礎的な力・・・歌う、聴く、読む、書く を磨く訓練のことです。

ソルフェージュでは何をするのか?

音楽の基礎といっても具体的に何をするのでしょうか。受験生向けのソルフェージュと、小学生くらいの導入期にわけてご紹介します。

受験対策・本格的なソルフェージュ
開始時期:小学校高学年くらい〜、または受験を決めたその時から始めます。音高を受けたいけどもう中3、ソルフェージュはしたことがない・・・でも可能性がないわけではありません。今すぐピアノの先生に相談しましょう。

音楽高校、音大の授業や入試では、聴音、新曲視唱、新曲視奏という科目になります。

聴音 
8小節ほどの旋律が試験官によりピアノで演奏されます。それを聴きながら、5線譜に書き取り楽譜にします。

やり方は学校によって違いますが大体2パターンです。例えば8小節の場合、
①8小節通して5回演奏される間に書き取る、というやり方
②まず8小節通して演奏、前半4小節を3回、もう一度8小節通し、後半4小節を3回、最後に8小節通す。この間に書き取るやり方
※回数は学校によって違います。

音とリズムがわかり、リズムの書き方や楽譜の書き方の知識が必要です。

旋律を書き取る旋律聴音以外に、和声を書き取る和声聴音、2声の旋律を聞き取る複旋律聴音、5回ほど連続で演奏を聞き、記憶してから記譜する記憶聴音などがあります。

新曲視唱
8から12小節ほどの単旋律の曲を渡されます。その場で規定の時間、黙読した後に歌唱します。
正確な音程で歌える力、楽譜を早く正確に読む力が必要です。音程が正しいのはもちろん、音楽的に歌うことを心がけます。規定の時間というのは学校により違いますが、短い時間が多いです。(緊張で短く感じてしまうことも!)
短い時間の中で、曲の全体像をつかみ、細かいアーティキュレーションや強弱、引っかかりやすい臨時記号のチェックをします。

また、視唱ではありませんが、「コールユーブンゲン」という歌の教本から課題が出る学校もあります。音程はもちろん、音符や休符の長さを正確に、なおかつ音楽的に歌う必要があります。また、あまり見慣れない書き方がされていたり、2分の3拍子なども多いため、独学では難しいでしょう。

新曲視奏
1ページほど(楽器、学校によって違います)の曲を渡されます。規定の時間黙読した後に演奏します。
楽譜を早く読む力、楽器の技術が必要です。
視唱と同じく、全体像と細部を短い時間で把握する必要があります。視唱は単旋律でしたが、ピアノの新曲視奏はもちろん大譜表でたくさんの和音を掴むようなものもあります。
黙読の間に頭の中で演奏し、ペダルなども臨機応変に対応する必要があります。

ソルフェージュ初心者導入編
本格的な聴音や視唱でなくても、幼いころにソルフェージュの導入的なことはできます。すぐに効果が出なくても、ピアノを続けていく中で必ず演奏に役だちます。
私はヤマハで育ちましたが、ヤマハの教材と先生がうまく導いてくださったと感じます。
いざ音楽高校や音大を受験したいと思った時、スムーズに聴音や視唱へ移行できます。

ソルフェージュ導入ですることは、年齢や能力によって様々です。私の教室では、ピアノのレッスンの中で簡単なソルフェージュをしようと思うといつも時間が足りなくなるため、ピアノのレッスンに加えて20分ほど希望者に行っています。ヤマハのグレードを取得していた生徒さんもいました。初めての方は歌、リズムうち、簡単な音あて から始めています。
(※音楽高校や音大の受験生には、ピアノのレッスンの続き、または別日に1レッスン1時間30分ほど取ってソルフェージュのレッスンをしています。)

歌う
歌は音楽の基本です。視唱のように、一人で旋律を歌ったり、先生の伴奏にのせて歌います。自分で伴奏を弾きながら歌うことも。

リズム打ち 
簡単なリズムからスタート。タン(四分音符)やターアー(二分音符)と言いながら打つ。
音符の長さと休符もしっかり意識させます。
慣れてきたら右手と左手で同時に違うリズムを打ったり、足で拍を打ちながら手でリズムをたたきます。

音あて(単音、和音
クイズのように先生が弾いた音を当てる。
先生が1、2小節の短いメロディーを弾き、続けて生徒が歌う、又は生徒ももう一台のピアノで弾く。
→年齢が上がり、慣れてきたら、実際に書かせて聴音にしていきます。

先生が三和音、または四和音を弾き、それを下から言う。またはもう一台のピアノで再現する。(はじめての小さい子などは、ドミソ、ドファラ、シファソの3種類に限定することもあります。)
慣れてきた生徒さんには、先生が弾いた和音の種類をあててもらいます。(長三和音、短三和音、属七の和音など)

伴奏付け
旋律(右手)に適する和音(左手)をつけます。ハ長調のⅠ(ドミソ)、Ⅴ7の転回形(シファソ)の和音からはじめ、慣れてきたらⅡ、Ⅳ、 Ⅵなどを使えるようにしていきます。

ソルフェージュがあなたの演奏にもたらすこと

このような訓練はなんのためにするのでしょうか。演奏にどんな影響が現れるのか、考えられることをいくつか上げてみます。

  • 譜読みが早くなる
  • 1音1音に対する意識が高まる。
  • 旋律を自然に歌わせるにはどうすればよいか、考えることができる
  • 正しいリズムで弾こうという意識が高まる
  • リズム感が良くなる
  • 複雑なリズムが出てきた際に、CDなどのマネではなく、理解して演奏することができる。
  • バイエルやツェルニー、古典派のような曲の場合、ある程度次の和声が予測できる
  • 近現代の音楽などで、一見関係なさそうな和音の連続に遭遇した時、法則やルールがあることに気が付ける
  • 転調の箇所や、音符は同じでもアーティキュレーションが違う箇所など、楽譜の中のメッセージに気が付ける。


なんだか結構良いことがありそうですね・・・(笑)実際、練習をスムーズに行う助けになりますし、譜読みが早いということは多くの曲に触れることができます。また、楽譜の上っ面を見るだけでなく、よく読みこむように意識するようになると思います。

とは言え、技術的なことはもちろんたくさん練習しなければ上達しません。また、ソルフェージュはソルフェージュ、ピアノはピアノというふうに頭の中で全くわけてしまっては意味がありません。二つをリンクさせようという意識は必要です。小さい頃からたくさんピアノを弾いてきた方は、なんとなく自然に絶対音感が身につき、暗譜も譜読みも早く出来ると思います。「なんとなく」できるようになった能力をソルフェージュの訓練で裏打ちすることにより、自分が納得でき、さらに説得力のある演奏につなげることができます。

楽典との併用

ソルフェージュ能力を伸ばすには、「楽典」の知識が必要です。楽典とは楽譜の読み書きをするためのルールや理論のことです。楽典の知識がないと聴音の楽譜を仕上げることができませんし、視唱で楽譜を渡された時にその曲が何調なのか?どんな臨時記号がつきやすいのかなど、瞬時に情報を読み取ることができません。もちろんソルフェージュ導入の時点で少しずつ楽典の知識を入れていくのですが、受験には楽典の科目もありますし、音程や和音の種類などを理論的な知識を勉強します。

演奏やピアノへの好奇心がソルフェージ力を伸ばす

現在、聴音や視唱が苦手で困っている方、まずは楽器の先生やソルフェージュの先生に相談し、できれば積極的にレッスンへ通いましょう。

レッスンがない時、家で自分でできるトレーニング方法を少し紹介します。

  • まずはレッスンでの注意を思い出し、復習しましょう。書き取った聴音は再度自分で弾いたり歌ったりしましょう。直しだらけの楽譜を綺麗に書き直すのも良いですね。
  • 生徒さんで、「耳コピはできるんです!」という方がいらっしゃいます。それならば、よく聞くCMの曲や好きな歌をピアノで弾いてみて、楽譜に起こしたらどうなるだろうかと考えてみましょう。
  • 誰かに聴音の問題をさせるつもりで、8小節ほどの曲を作ってみましょう。面白いメロディーや綺麗なメロディの方が喜ばれそうですね。勉強になりそうな、ちょっと難しめのリズムを取り入れられると良いですね。ちゃんと正しい楽譜が書けるでしょうか?
  • ピアノの生徒さんだと、一人で歌うことに少し抵抗がある方もいます。日頃の楽器の練習の中で、旋律を実際に声に出して歌う練習をしてみるなど、歌う機会を増やしましょう。
  • レッスンで使用している本の、まだ弾いていない曲、気になりませんか?宿題には出ていないけど先取りして弾いてみたり、弾かなかったソナチネやソナタの楽章を弾いてみるのもいいですね。積極的にいろんな曲に触れましょう。

演奏の本番と同じく、ソルフェージュの試験も一度きりです。レッスンや自主学習での積み重ねと理論の知識がある上で、土壇場でのひらめきや対応力が必要です。ソルフェージュのレッスンは受け身になりがちですが、自分からも色々なアプローチをしていくと、より深い学びとなり、いざという時身体が動くでしょう(演奏と似ていますね・・・)。

chiho-pf.crayonsite.info

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