カバレフスキー ソナチネ Op.13-1 第1楽章

曲目別演奏のヒント

今回は、昔から小学生の定番のカバレフスキーのソナチネ第1番1楽章を取り上げます。 わたしが小学生だった頃も、いつも誰かがコンクールや発表会で弾いていました。
自分は子供時代に弾くことはありませんでしたが、カッコいい曲だな〜弾いてみたいな〜と思い、記憶を頼りに家で弾くこともありました。

ちなみに以前には、カバレフスキーのソナチネ第2番第3楽章を取り上げました。 カバレフスキーの生涯なども取り上げていますので、よろしければぜひご覧ください。

子供の頃は、誰かが弾いていたのを聴いて、なんとなく「忍者っぽい」イメージを持っていました。
すばしっこい曲調と、和音がパッパと移動していくのが、瞬間移動したり、手裏剣を何枚も飛ばす忍者のように思えたのです。(^^;;

教えるにあたって練習してみると、パシッパシッと和音がはまっていく感じや色々な表情を見せるあたりが、まるで万華鏡を覗いているようにも感じられました。

手元には、私が割と最近購入した全音出版と、母が昔購入したレッスンの友社の楽譜(黄色)があるのですが、2つの楽譜では指示に微妙に違う箇所がありました。
調べると、ソナチネは1930年に作曲され、1969年にカバレフスキー自身により改訂されたそうで、1番は強弱など、少し変更があり、2番はもっと大幅な変更があったそうです。
全音のものは1969年改訂版を基に出版されたそうです。
ではレッスンの友社は改訂前なのか、、、それは調べてもわからなかったのですが、演奏するにあたり、両方に良いなと思えるところがありました。
せっかくなので比べながら見ていきたいと思います。
(主な書き込み楽譜の写真は全音です。)

 

GO!!


allegro assai e lusingando とても速く、そして甘く

ル、ルジンガンド?ってあまり聞かない言葉ですね。allegroと並べるのも変な感じ。

時々出てきますよ。ただ辞書を引いてみると、大方dolceと同じ意味だけど、「媚びるように」という言葉が載っていました。doremiちゃんにはまだちょっと難しいかもしれないけど、第2テーマの雰囲気にはぴったりの感じですね。

提示部(1〜55小節)

第1テーマは強烈な和音3連続から始まります。どこがハ長調なのという感じですね。
初めて聴いた人は驚き、和音の面白さ、ノリのいいリズムに心持っていかれる始まりです。
喜怒哀楽で言えば怒りのパワーが溢れているようにも感じられます。

アクセント、スタッカート、テヌートなど細かくアーティキュレーションが書いてありますので、それを1つずつ実現させるように弾きましょう。
縦の響きを整えつつ、横のメロディーラインも流れがあるようにバランスよく聴いて弾く必要があります。 再現部ではffになるので、それも計算したfにしましょう。

1、2小節目 6つの和音をちゃんと重ねた上で、ソプラノを出すようにしましょう。
2音めの右手の指番号(245)は手の大きさによっては難しいかもしれません。135や124など試して、ソプラノが浮き立つ番号を探しましょう。

2小節目の2拍め裏はスタッカートがついています。軽やかに弾き、3小節頭はテヌートが付いていますので重さを感じましょう。

2小節めの4分休符2つで、音楽が止まらないように、1拍めの和音から2拍め裏の和音に向かうよう意識しましょう。

6小節めはバタバタしないように、ちゃんと鍵盤に指を付けてから打鍵するよう心がけます。
7.8小節めの3つの和音は、1つずつ強くなるようにしましょう。

9小節目 一気に弱く、しかし粒が立っているようにしましょう。1拍めには小さなアクセントを感じましょう。 右手は手を丸め、鍵盤を抑え込む感じで(指先は立てて)左手の和音は、小さく丸く整った響きで。

レッスンの友社

11〜14小節めは書いてある通りの強弱で。11小節めはまだpです。13小節めのアウフタクトは小指からなのでしっかり、14小節め頭も1拍めを感じます。もういちど繰り返されますが、2回めの方が2小節付け足されています。

13〜20小節めは全音とレッスンの友社では少し強弱の指示が違います。
全音(←1969年改訂版に基づいている)の方が長いクレッシェンド、デクレッシェンドでおおらかな指示になっています。
わたしはレッスンの友社の方が生き生きする気がして、そちらを採用しています。

23小節めはアウフタクトからキッパリと。
25小節めのアウフタクトはsubito pで。手を丸めましょう。 もちろん左手も強弱の差をつけます。

28から30小節は、流れるように弾きますが、滑らないように。1拍めにテヌートがあるので意識すると良いですね。

ここの左右の受け渡しが滑らかにいかないなぁ。

単に粒が揃っていなければ、色んなリズム練習をしたほうがいいですね。

まあ、それもあるかもしれないんだけど、受け渡しの時に固くなってしまいます。

考えられるのは、右手から左手へ受け渡した後、右の手首が固まっていませんか?
右手から左手へ受け渡して終わりではなく、右手は次の持ち場へ行くわけです。
ソファミ♭レ で左へ受け渡し かつ、ミ♭レドシの方へ手首を緩めて移動するよう心がけて見て下さい。
左手も同じです。
ドシラソと弾いた後手首を固めず、ラソファ♯ファの方へ手首を緩めて移動するのを心がけて見ましょう。

31小節目はmfなので、クレッシェンドの勢いで突っ込みすぎないように、ある程度コントロールしましょう
ちなみにレッスンの友社では31小節めはpの指示になっています。
わたしは32小節めから第2テーマということで、全音のmfを採用しています。 (譜例は下の写真)

第2テーマ(32小節め〜)

ホ短調です。リズミカルで興奮気味だった第1テーマに対し、悲しげな歌が聞こえてきます。気だるさのようなものも感じます。
全音では、cantabile, ma in tempo(歌うように、しかしもとのテンポで)の指示。
レッスンの友社では tranquillo e cantando ma in tempo で、静かに(tranquillo)の指示がプラスされています。
改訂の時に削られたのでしょうか。しかし雰囲気的に、静かにという指示はわかりますね。
さらにレッスンの友社の方は細かいクレッシェンド、デクレシェンドが書かれています。これでスラーが表現できます。(黄色で書き込んでいます)

両手とも、とてもレガートで、和音のレガートが切れてしまうところはソプラノをつなげます。 もちろん歌いますが、感傷的になりすぎずテンポも遅くしすぎない方が良いですね。
左手は半音階が多く使われています。

36小節めからは、和音の響き(縦)を整えつつ、きれいにメロディーが流れていく(横)ようにバランスよく弾きたいですね。縦と横の線どちらも意識しましょう。
書いてある指番号は小柄な子には届かない場合があるので、楽譜のように変えることもあります。(37小節)

37小節め フレーズが長くなっていますので2拍め(ソプラノがレ)が引っ込まないように気をつけます。

40小節め 少し弱くからクレッシェンドしましょう。

レッスンの友社(48〜51小節)

48小節め 指番号が届かない場合は上の譜例のようにしています。ガタガタしやすいですが、ここも縦横のラインをバランスよく聴きましょう。レッスンの友社版にはpiu fとクレッシェンド、デクレッシェンドの指示があります。
いきなり強くするというよりは幅広くなったイメージで弾いています。

52、53小節は前向きに、54、55小節は落ち着きを持ったような音色を変えましょう。
53小節目のpoco rit.遅くなりすぎないようにしましょう。

 

展開部 5695小節

56小節め 再び冒頭のテーマが1オクターブ下の音域に現れます。 臨時記号はなく、冒頭よりは素直な感じです。密やかにリズミカルに弾きましょう。
1拍めに、指先に小さなアクセントを感じると良いと思います。

65小節めアウフタクトから 雰囲気は違いますが、9小節め〜の音型です。9小節めとはまったく違うテイストで、かなりレガート、艶やかな音で弾きましょう。
と思ったら66小節は軽快に面白がって。
この辺りはscherzandocantandoが1小節ごとに入れ替わり、表情がクルクルと変わります。
もちろん横の流れも大切ですが、縦の響きもよく聴きます。

レッスンの友社


3回めのcantando(72小節め)は今までよりさらに艶やかな音で、音域の広がりを感じましょう。 レッスンの友社版にはさらにpiu flegatoの指示があります。

76小節め subito pは冷たい感じで。ペダルもなくて良いと思います。
80小節ではオクターブ跳躍の熱量を持って。ちなみにレッスンの友社版には79小節目のクレッシェンドはありません。

84小節からはscherzandoで9小節めからのリズムを使い、発展させます。
音域が左右かなり近く、高めなので、左右同じくらいの音量でも良いですが、少し右手を出す方がきれいです。
指がもつれないように、器用に弾く必要があります。急がないように注意しましょう。 特に左手の3、4(2)の出し入れを意識すると良いですね。

88小節め 溢れ出て激しく下行しています。しっかりとした音で、和音は1つ1つ整った音で。

92小節目からの音階は、左右の手が当たらないように右手は腕から高めで、鍵盤の奥めを弾くようにしましょう。思い切ってクレッシェンドで駆け上がります!

 

再現部 96〜142小節

そのまま再び冒頭のパッセージが戻りますが、今度はffです。

112小節から提示部と変化していきます。左の和音が滑りすぎないよう、しっかり和音の音と指番号を把握しておきましょう。

116小節め 溢れ出し、下行します。左手はムキになって叩かないよう気をつけましょう。弱くしません。

再現部の第2テーマはイ短調になります。提示部より4度あがり、透明感が増します。

131小節目から、一生節ごとに変わる強弱記号を意識します。mfはたっぷりと。 最後は軽やかに、消えましょう。

軽やかにドロン

お読みいただきありがとうございました。 宜しければホームページもご覧ください。

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