私の一番初めのピアノの先生は母でした。
その後ヤマハ音楽教室に入り、音楽高校、音大と進みましたが、その節目節目に素晴らしい先生方に出会い指導していただいてきました。
その中のお一人で、大学入学から現在もお世話になっている恩師のレッスンを受けに行ってきました。先生は東京にお住まいなので頻繁には行けませんが、本番前や、何かあるたびにレッスンを受けています。
演奏も経歴とてもすごい先生なのに、いつも穏やかで、怒っているのを見たことがありません。逆に、褒めることも少ないので、褒めてくださった時は少し自分に自信を持てます。ピアノも人柄も少しでも近づきたい思いですが、まだまだ修行が必要な身だと痛感することばかりです。
先生の教えの中で私にとって一番大きかったのは、弾き方を変えてくださったことです。ガチガチだった私の上半身を一生懸命ほぐしていただきました。
幼い頃から、演奏時に肩が上がることはよく指摘されていたし、脱力に関してもよく指摘されていました。だからどうにかしたい、でも結局どうしたら良いかわからないまま来てしまった、という自覚がありました。高校生の私は、指の力が弱いから、補おうとして肩や腕に力が入ってしまうのではないか?と考え、指を強くしなくちゃ!=たくさん弾かなくては!と思っていました。
先生方の指はとても太く、本当に強かったのです。
私の考えは全くの間違いではなかったと思いますし、たくさん練習することは絶対に必要でした。 しかし今考えると、指を動かすことばかり意識がいっており、指以外のことや腕全体で弾くということが抜け落ちていたのだと思います。あの時、もっと肩や上腕に意識を持って突き詰めて練習していれば良かったと心から思います。どの先生も肩のことは何度もおっしゃってくださっていたのです。
先生には、演奏時の腕の使い方をスローで細かく説明しながら教えていただきました。音がこういうふうに動く時には、腕や肘はこういう風に動いて、手首はこういう風に・・・といった具合に肩から指先までの一連の流れを意識させられる感じでした。
椅子も高くしたり低くしたり、色々実験もしました。そして、レッスンの最後にはピアノ椅子に座ったままの体操(ラジオ体操みたいなものではありません。)を毎回して、腕や背中の動きを再度おさらいしていただきました。
覚えの悪い生徒でしたから、またか・・・と思う時もおありだったと思うのですが、大変粘り強い先生で、何年もかけて教えていただきました。
そのようなレッスンを受け、私の固い頭もほぐれて来て、打鍵する前の動作や体がどれだけ大切か考えるようになって来ました。鍵盤と接触するのはもちろん指先ですが、指先ばかり考えていると、打鍵する前の動作は忘れがちになるのだなあと気づかされました。
音を出す前に体から指先に力を送ったり、上腕の方からコントロールする感覚、腕全体という感覚・・・「そういうことか!」とピンと来たのは、大学で学び始めてからだいぶ経ってからでした。同時に、小学校から高校まで教えていただいた先生方のおっしゃって下さったことも頭に浮かびました。
今となっては力が入りっ放しで演奏することは有り得ませんし不可能ですが、それまでの弾き方や考えを変えるには、私には長い時間が必要でした。自分が指導するようになって、先生にご指導いただいた脱力や弾き方は伝えていかねばと、小さな生徒さんから伝えるようにしています。ピアノの演奏時の良い姿勢、というのを小さいうちから当たり前にしてあげたいなと思っています。それに、中学生や高校生などある程度年齢のいった生徒さんのレッスンでは、腕の使い方やタイミングが上手くいくと音色が全く違うことを実感し、嬉しくなります。
先生の教えを伝えつつ、この先は自分独自の、もっとわかりやすく伝わる方法を探していきたいと思います。
今回のレッスンでもたくさんのことを教えていただきました。また改めて投稿したいと思います。