J.S. バッハ シンフォニア 第14番

曲目別演奏のヒント

カバレフスキーに続き、今回はバッハのシンフォニア 14番の演奏のヒントを書いてみたいと思います。厳かで、温かみのある雰囲気の美しい曲です。
季節は春、あたたかさにつられて花がふんわりと咲き始め、どこからか蝶が飛んできて、、、という情景が思い浮かびました。皆さんはどんなイメージでしょうか。
ちなみに、生徒さんに「この曲どんなイメージで弾きたい?」と聞いて、アイディアがない時は、季節、温度、喜怒哀楽、性別など選択させて、そこからワードを引き出しています。自分が思いもしなかった言葉が出てくると、とても嬉しいですね。


この曲は後半、各声部の弾き分けが難しいので、各声部をしっかり把握してから参考にしていただけると嬉しいです。


〈第1部 1〜6小節目〉

1小節目 アルト声部からテーマがはじまります。
アルトの出だしはよく通る音で、しかし硬くならないようにしなければなりません。打鍵の時手首を落としすぎず、打鍵したらすぐ手首を緩めましょう。
イメージ湧きにくい方は、もしこのシ♭をクラリネットやオーボエで演奏したらどうなるか想像してみましょう。シ♭の中で自然にクレッシェンドができますね。
ピアノは一度打鍵してしまえば音は減衰(ディミヌエンド)するしかありませんが、心から歌い、音を出す前から終わりまで意識すると、響きが変わってきます。
一度自分が管楽器奏者になったと思いこんで弾いてみると良いかもしれません。
タイの後にもう一度シ♭を打鍵しますが、硬くならないようにしましょう。一度押した鍵盤が全て上がってくる前に押し戻すイメージで弾いてみましょう。
バスはテーマが生きる、ほどよい音量で弾きます。ノンレガートで弾く奏法もありますが、私はレガートで弾きます。スムーズに一本の線を辿るように、なめらかに。肩の力を抜き、飛び出る音がないように指先をコントロールします。特に親指が飛び出ないように気をつけます。

テーマはソプラノ、バスへと広がっていきますので、始めは強すぎず、強弱記号を書くとすればpでしょうか。ソプラノはバスよりも通る音色をこころがけます。

2小節目ソプラノに5度上のファからテーマ(応答)があります。通る響きで弾きましょう。冒頭のテーマと同じアーティキュレーションで。
アルトは1.2拍目に、これから間奏部分で多用される動機が現れます。終わりのトリルは軽やかに弾きます。
バスは全て小指で綺麗に切ってもよいですし、
5-45-45-4 と届けばレガートで弾くのも綺麗です。

3小節目 2小節アルトに出てきた動機を使った間奏。ソプラノの頭のファは指先を立てて優しく入りだんだん膨らませましょう。
タイのついた長い音符はテヌートぎみに、8分音符は優しく切ります。
3拍目急がずに最後までしっかり歌って次の小節に入ります。

4から5小節目 バスにテーマが現れます。支えるようなしっかりめの音色で。テーマのアーティキュレーションは変えないようきをつけます。テーマの後半の音型を繰り返し下降していきますので、5小節めに入ってからディミヌエンドすると良いですね。
ソプラノの出だし レミファ はレガートに。そののちシ♭からレまで順次進行です。(1小節めのバスから来ているとも考えられます)
アルトは間奏の動機を弾いたのち、16分音符のもごもごとしたパッセージにうつります。親指和らかく、ゴツゴツしないようにしましょう。

6小節め 間奏 アルトの終わり、ヘ音記号のファまでちゃんと聞き切りましょう。聞き切ってからソプラノとバスでクレッシェンドします。

〈第2部 7〜11小節め〉


7小節め お休みしていたアルトがテーマを主張しています。
冒頭と同じくシ♭からはじまるテーマではありますが、ファに♯がつくことで短調を感じさせ、バスのラ♭、その後、アルトがシ(ナチュラル)からドに進行することから、調性的にはハ短調になります。似たテーマですが、冒頭とは性格が違うことを感じましょう。少ししっかりめの緊張感のある音色が良いですね。ただし、ぶつけてはいけません。
7から8小節のアルトのファ(右手)からシ(左手)途切れないようにしましょう。
ソプラノは6小節めからの続きで、7小節めのミレドレの最後のレまで聞き届けます。
バスは7小節3拍目から9小節目まで、しなやかな16分音符で。

8小節め ソプラノにしっかりとしたハ短調のテーマが現れます。出だしのソは小指の先を立て、天井を高く感じて響かせましょう。(ぶつけてはいけません。)
アルトの4拍目頭のレを左手で取ると、ラ♭レミ♭ファシ のラインをレガートで弾くことができます。

9小節目 ソプラノ2拍目のドから次の小節のドまで綺麗なレガートで弾きましょう。3声部ともハ短調の終止を感じましょう
アルトは冒頭のテーマと同じアーティキュレーションで弾きましょう。

10、11小節目 ハ短調の終止からすぐに、バスにヘ長調のテーマ。調性の温かみを感じる音色をめざしましょう。
アルトは、ソプラノの保続音ドを小指でおさえながら、残りの指で、バスが生きる音量を保ちながら柔らかく弾かなければなりません。親指に力が入りすぎないように気をつけましょう。
12小節目に向かって、クレッシェンドしましょう。

〈第3部 12〜17小節目め〉


12小節め (12小節目だけは第2部の写真をご覧くださ。)ソプラノにニ短調のテーマが現れます。このラは(最後のコーダのシ♭を除いて)曲の中で最高音にあたり、また、これをきっかけに次々にテーマが畳み掛けて曲の緊張感がかなり増しています。しっかり響かせましょう。
アルトもすぐにシ♭からテーマを畳み掛けます。アルトの3から4拍めのソファミ は左手で取ります。

13小節め さらにアルトのド♯レも左で取ります。

14小節め 1から3拍目でニ短調の終止を感じて。ソプラノ3拍目の裏ファからハ短調のテーマが現れ、畳み掛けます。12小節の高いラよりはおとなし目ですが響かせましょう。
バスがすぐに4拍めから同じ調でソプラノを追いかけます。

15小節め ソプラノの3拍めミ♭が短くなりすぎないようにしましょう。
アルトがドからテーマを追いかけます。(変ロ長調)

16小節め 1、2拍めはソプラノとアルトの弾き分けに注意します。ソプラノはレガートで、アルトはタイのファで一旦切ってからラ♭レミ♭ファシ♭はレガートとなります。アルトの2拍めのレを左で取ると良いです。
3拍目からバスがテーマを追いかけます。(はじめに変化あり。変ホ長調)
ソプラノ3拍めから次の小節にかけてレガートで弾きましょう。バスと綺麗にハモらせましょう。17小節め変ホ長調に向かってたっぷりと持っていきます。

〈第4部 17小節〜24小節め〉


1719小節ここから終わりに向かって、ソプラノとアルトにたくさんテーマが畳み掛ける(ストレッタと言います。)ので、混乱せずにしっかり把握して弾きわけましょう。冒頭のテーマのアーティキュレーションを保つために、指番号の選択が大切になってきます。よく考えましょう。
17小節め1.2拍め変ホ長調の終止をたっぷりめに。バスの深さと上2声の和声をしっかり感じましょう。3拍め裏ソプラノからテーマのストレッタが始まります。ここから最後まで主調の変ロ長調です。
4拍目からすぐにアルトも畳み掛けます。(変化あり)17小節め最後のアルトのシ♭から18小節め1拍めアルト ラソファは左で取ると良いです。3拍目のドも左で取りましょう。19小節め1拍目最後のドと次のシ♭も左手でとります。3拍めのシ♭とドは右手親指でスライドさせます。

20、21小節 アルトのファから1オクターブと4度飛び、シ♭から再びテーマのストレッタが始まります。3拍目裏からソプラノが、21小節目1拍目裏からバスに次々にテーマが現れます。1回ごとに強さを増していくような感じで行きましょう。

22〜24小節 コーダです。二度のストレッタを経て、だいぶ高揚していますので、少しだけ弱くしてからクレッシェンドしていきましょう。23小節目のソプラノで「ついに、ついに来たよ!」と感動的に持っていけると良いですね。
バスの8分音符は響かせながらノンレガート(1音1音にテヌートを感じるように。)で、22小節目の1.3拍目頭のレとミ♭は特に重みを感じましょう。23小節目の4拍めから24小節にかけてほんの少しゆったりとし、落ち着かせましょう。



音楽科高校や音大の受験では平均律を弾くことが多いですが、その前段階としてインベンション、シンフォニアでしっかり基礎固めしておく必要があります。
シンフォニアはインベンションに比べてはるかに難しく、時間がかかりますね。ですが丁寧にこなすと平均律のフーガも入りやすいです。気長に頑張りましょう!

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