J.S.バッハ インベンション 第9番

コンクール

シンフォニアに続き、今回はJ.S.バッハ インベンション第9番 へ短調を取り上げます。

先日、遠方にお住まいの小学生の方で、縁あってスカイプでレッスンをさせていただいたのですが、その時この曲をレッスンしました。事前に動画も送って下さっていたのですが、既にとても上手に弾かれていたので、私もレッスンするにあたって、改めて曲を見直しました。もちろん何回もレッスンする機会のあった曲ですが、自分の演奏や考えを見直す機会をいただき感謝です。

やはり実際に同じ空間でのレッスンの方が良いに決まっていますが、指番号や体の使い方などスカイプでアドバイスできることもたくさんあります。動画を送っていただき、感想やアドバイスをお送りするもできますので、ご興味がある方はお問い合わせください。

さて、インベンション9番は、前回書いたシンフォニアに比べて技術的には難しくありませんが、しなやかな音色を保ち、繊細に音楽を作っていかなければなりません。
若葉に軽やかな雨が降り注ぐような、が草木を優しく潤すような、しっとりとした情景が似合う曲だなと思います。

〈第1部 1〜16小節め〉

1〜4小節 4小節1まとまりで、頂上が3小節目にきます。全体的には3小節目に向けてクレッシェンドし、4小節目でおさめましょう。全体的なクレッシェンドの中で、音の進行方向に沿って細かくクレッシェンドやディミヌエンドでニュアンスを作り、繊細に作り上げていきましょう。ソプラノとバスが違う方向を向いて進行する時(例えば1小節目の1.2拍目はソプラノは下降していますが、バスは上昇していますね。)は、左右で違う強弱を付けるときもありますので、ちゃんと各声部の動きを把握しておく必要があります。

1小節めのソプラノからテーマが示されます。1拍目は音の方向に沿ってほんの少しディミヌエンドし、2拍目の8分音符はやんわりと切りましょう。肘から柔らかく音を切る感じで。3拍目のレ♭は長い音符ですので、腕の重みを乗せて。
バスには対旋律が示されます。1オクターブの跳躍ののち、なだらかな16分音符の連続です。1拍目裏のファに重みをのせ、3拍目で少しディミヌエンドです。ソプラノの3拍目につられて変なアクセントがつかないよう気をつけましょう。
冒頭に強弱記号を入れるとすると、ピアノかメゾピアノくらいでしょうか。

2小節目は両声部ともゼクエンツなので、1小節目と同じニュアンスで、音量は全体的に少し上げます。

3小節目の1拍目は両声部綺麗にハモらせながらクレッシェンドし、バスが半拍遅れて頂点に着きます。ソプラノの4拍目の8分音符は繋げても良いですし、私は重くしたくないので、ほぼレガートにしています。(ウィーン原典版ではスラーがかかっており、ブゾーニ版ではスタッカートになっています。)
親指で最後のドを弾きますが、決して飛び出ないようにしましょう。

4小節目はソプラノはクレッシェンド&デクレッシェンドで、バスは2拍目から次の小節に向かってクレッシェンドで上ります。

5〜8小節 1〜4小節のバスの対旋律がそのままソプラノへ、1から4小節のソプラノものテーマもバスに移ります。(8小節目を除いて。)
ニュアンスのつけ方は音の方向で決めますが、先ほどより音域が高くなり、両声部の距離が近くなります。常にバランスをよく聞きましょう。
8小節目の3拍目ソプラノはしっかりクレッシェンドします。

911小節め 9小節めソプラノに再びテーマが現れますが、3拍目の跳躍が1オクターブと3度と大きくジャンプします。音程の幅を感じて三拍目ラ♭は親指を立てしかっりめに響かせます。緊張感を含んだ音色を目指しましょう。ソプラノが大きく跳躍し、バスは下行することで両声部の幅も広がります。下行した先の10小節目バスの1拍目シ(ナチュラル)はハ短調に転調する音になりますので、その音に向かってバスはクレッシェンドして良いと思います。

1011小節目は両声部とも同じ方向へ音が進むので、それに合わせたニュアンスにします。
今までは4小節単位でテーマが現れていたのに対し、ここでは3小節間で次のテーマに映ってています。(4小節目に対応する小節がない)そこからも緊張感が感じられます。

1216小節め12小節めのソプラノにハ短調のテーマが現れ、9小節目と同じ跳躍をします。バスは13小節目のファに向かって下行していきます。

13小節目では、対応する10小節めとは逆に6度上に跳躍し、さらなる発展を期待させます。期待通り、14小節目で、この曲の最高音(ド)まで上がり盛り上がり、その熱を、むくむくと登ってきたバスの対旋律が受け継ぎハ短調で終止します。トリルだけに集中せず、バスの旋律と美しく絡ませる意識で弾きましょう。全体的な強弱としては12小節目から16小節目に小節目に向かってクレッシェンドしていきましょう。

〈第2部 1728小節め〉


1721小節め 1拍め ハ短調の終止した音はおさめて、すぐにバスのテーマがはじまります。指番号はミ♭を親指で取り、十分指を伸ばしておいて、2でファを取るとスムーズに移行できます。ぶつけて弾きやすいので注意します。ほんの少しの間があるときれいです。
調性はハ短調のままです。バスの強さは、終止の雰囲気を保ち、また19小節めに山があることから、あまり強すぎないように始めましょう。
対旋律ソプラノも静かめに演奏すると、22小節め以降とコントラストができて美しいです。

2224小節め 前半はラがナチュラルに、バスのレに♭がつき、変ロ短調に転調します。シリアスな雰囲気ですね。強弱は先程とは対照的に積極性を見せましょう。跳躍も多く、23小節バスの3度ずつ上行するパッセージは、周りに比べると鋭めの音型ですね。少し緊迫感を感じます。
後半は変イ長調へ。22.23小節のバスがソプラノにそのまま移っただけなのに、表情が一変します。明るい輝きを感じて24小節めはクレッシェンドで両声部広げます。

2528小節め 輝きを保ったままたっぷり入ります。ソプラノはテーマの動機に変化を加えた形、バスは対旋律の動機に変化がある形のゼクエンツです。26小節は少しだけ弱く(弱くしすぎない)、27小節めはバスはそのままの形ですが、ソプラノは跳躍がなくなり優しくおとなしい流れになりますので印象を変えましょう。28小節めは、29小節に現れるテーマに向かい両声部歌いあって膨らませていきます。

〈第3部 2934小節め〉
ソプラノは冒頭のテーマをそっくりそのまま弾きますが、キャラクターは変えて、こちらは堂々と弾きましょう。
バスは対旋律を更に流れのある形に変化させ、冒頭より1オクターブ低いところまで広げています。幅広さを存分に感じましょう。
32小節のバスの上行形は、少し弱くから気持ちよくクレッシェンドし、今度はソプラノと近づいていくのを感じましょう。トリルはまたバスといい具合に響き合うように速く入れすぎないようにしましょう。
程よく落ち着いて曲を締めくくります。

今日バッハは様々な楽譜、CDがありますので、いろんな学者や演奏者の解釈を知ることができます。どんな弾き方にしようか迷う箇所もあると思います。私自身、小学生の時インベンションはブライトコプフ版(ブゾーニ編)を使って勉強していましたのでその影響は根底にあると思いますが、改めて様々な楽譜を見たり演奏を聴いたり、自分なりに分析していく中で発見があると、その都度弾き方を変えたりします。
コンクールや本番で弾くときに大事なのは、その時点で自分が一番納得できる解釈や弾き方で披露することです。曲を通して自分の考えを伝えるつもりで、自信を持って演奏できますように。

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