メンデルスゾーン 無言歌「狩人の歌」

コンクール

メンデルスゾーンの無言歌集の中の1曲です。メンデルスゾーン(1809〜1847)が21歳から、亡くなる2年前の36歳まで折に触れて書いていた詩的な作品集です。

無言歌という通り、歌詞はないけれどこれは歌だなぁと思わせる美しいメロディーがたくさん出てきます。
私自身、無言歌を本番で弾いた記憶はないのですが、つむぎ歌、詩人のハープなど数曲は子供の頃練習しました。「狩人の歌」は好きな曲の1つで、音楽科高校の副科の生徒さんに勧めたり、小学校高学年の生徒さんに時々レッスンしています。

この曲の「狩人の歌」というタイトルはメンデルスゾーン自身が付けたわけではなく、あとから違う人物がつけたそうです。しかし曲を通して、躍動的な雰囲気やホルンの響きというような狩のエッセンスが確かにあり、それとメンデルスゾーンらしい甘く優美な旋律と華やかさが見事に融合されたものに仕上がっています。

たくさんある!狩の曲

ところで「狩」を題材にした音楽はたくさんありますが、「狩」というものは私にとって全く身近なものではありません。(まあ、ワルツだってポロネーズだって身近であるかと言われたらそうではありませんけど。)
今までほぼ、音楽を通して触れてきました。

ピアノ曲だと、
ブルグミュラー 25の練習曲より 「狩」
グルリット「狩」
シューマン「森の情景」op.82より 「狩の歌」
シューマン 子供のためのアルバムop.68より 小さな狩の歌
チャイコフスキー 「四季」 より9月「狩」
ベートーヴェン ソナタ18番「狩」
リスト パガニーニ大練習曲より「狩」

など おそらくもっとあるでしょう。

ピアノ曲以外も調べてみると
ヴィヴァルディ 四季より「秋」第3楽章
バッハ 狩のカンタータ BWV208
ハイドン 交響曲 第73番 狩
モーツァルト 弦楽四重奏 第17番 狩
シューマン 5つの狩の歌(合唱)
ウェーバー 魔弾の射手(登場人物が狩人)
シベリウス 組曲「歴史的情景」第2番~狩op.66-1
スメタナの「我が祖国」のモルダウ 一部 狩の場面があります

など。もっとたくさんの狩の曲があります。

森がある限り、たくさんの狩にまつわる曲が存在します。現在も狩を楽しむ人口が多いことから、ヨーロッパにおいてはとても身近だそうです。

良い機会ですので知らないなりに、ヨーロッパの「狩」について調べると、
古代、生きるためにされていた狩は、次第に王族、王族に認められた貴族だけが出来る娯楽やスポーツとなっていきました。例えばウィーンのハプスブルク家は初代皇帝から最後の皇帝フランツ・ヨーゼフまで皆狩猟が大好きで、広大な狩猟場を持ち、狩猟のための城をいくつも持っていました。宮廷行事にまで組み込み、ほぼ一年を通して狩猟をおこなっていました。フランツ・ヨーゼフの妻であり宝塚などのミュージカルで大人気のエリザベート皇后も、ものすごい美貌の持ち主でありながら馬に乗り狩を好む男勝りな女性として知られています。

国によって狩猟の方法はちがい、ドイツ、オーストリアよりフランス、イギリスの方が昔から大規模な狩を行なっていたようなのですが、どちらも大人数で行っており、猟犬や馬も何頭も行きます。特に王族の狩はしっかり役割分担がある組織的なもので、大変賑やかだったようです。

 

演奏にあたってイメージするなら、森、川、狩人、たくさんの家来、馬、狩猟犬、角笛(ホルン)弓矢、銃、鹿や狐など獲物、
また、心情的には楽しさ、興奮、活気、緊張、悲しみ(←獲物)
などが材料になると考えられますが、先ほど書いたように、この曲は狩の情景をそのまま描写したわけではなく、狩の要素(ホルン、気分)を大いに含んだ美しい歌であることを忘れずに弾いていきたいと思います。

前回のインベンションで登場したdoremiちゃんはまだオクターブ掴むのがやっとなので、小学校高学年のsoraくんが登場します。勤勉な子ばかりで先生嬉しいな・・・・・・

初めまして。soraです!大きい音は出せるけど、もっと綺麗な音が出せるようになりたいな。よろしくお願いします!

「狩の歌」 演奏のヒント

〈第1部〉1〜29小節目3拍目

1〜11小節目 晴天の狩日和、ワクワク気分で勢いよく森へ馬で駆けていくようです。
1小節目左手を勢いよく、掴みながら打鍵し、右手は長い音(ミ)に向けてクレッシェンドします。3回駆け登った上のミ(3小節目4拍め)にアクセントがあり、さらにあと3回もアクセントがついています。5の指をしっかり立て響かせ、4、5小節目は両手で響かせましょう。

5小節め 4拍目〜9小節め まだfですが、左手ラのオクターブを弾みをかんじてしっかり弾いたら、5.6拍めの両手の和音はぶつけないようにしましょう。8小節めが山になりますので全体的には8小節めに向かってクレッシェンドです。6、7小節め1、2拍めは2音間のスラーです。2音間のスラーは大抵2音めを弱くしますが、ここでそれをやり過ぎると、フレーズ感が細切れになってしまいました。あまり2音めを引っ込ませすぎないようにする方が良いかなと思います。8小節めはソプラノはもちろん、バスのファ♯もしっかり。9小節めの2音間スラーはもちろんdim.してください。バランスをよく聞き、特に小指はしっかり響かせましょう。

11〜15小節め 12小節めアウフタクトはsubito pで。しかしソプラノの響きは曇らないようにし、少し粘りを感じましょう。スラーの部分はきれいにレガートで弾きましょう。左手は出来るだけ各音を保ち、鍵盤から指を離さないようにしましょう。低音から跳躍するときも肘を外に張らず、鍵盤スレスレで移動します。

15〜29小節め 15小節め5.6拍めしっかり掴みながら弾き、整った響きで。肘で切るイメージです。16小節めアウフタクトから左手はホルンの二重奏です。上のラインを際立たせるように弾きましょう。16小節め5拍めのシは右手の親指で取る方が弾きやすいと思います。
18小節めアウフタクトから両手とも弾き方は12〜15小節のように。徐々に積極的になっていきます。1音ずつ上がっていくバスのラインも少し浮き立たせて。
23小節から右手単音ですがしっかり。指が寝ないようにし、鍵盤を叩かない(触ってから押す)ようにしましょう。
25小節めから右手オクターブで下降してきます。体を安定させ、暴れないようにしましょう。
27小節のdim.28小節めのpも指でコントロールします。
あまりスタッカートと思わずに、パサつかないように一音ずつ響きを感じましょう。まるで馬で獲物を追い詰めていくようです。ホ長調に落ち着きます。

ここがどうしてもパサパサになります。フォルテで弾き続けるのも大変です。

パワー不足を感じたら、ここは右手はソプラノも親指も出す方向でいきましょう。また腕が下がっていると手首も下がることになり、指を鍵盤から上げる仕事量が増え、1音1音が短く(パサパサに)なってしまいます。
上腕を高めにし、上からオクターブを1つずつ掴んでいきましょう。(上からと言っても指は鍵盤についていますよ)
左手の和音の連打も、鍵盤から指を離れないようにすると良いですね。
テンポを落として、満足のいく音質や響きで弾けたら、その音色を崩さないでテンポを上げてみましょう。

〈第2部〉 29〜50小節め

29小節後半〜36小節め 16小節め〜と対応していますが、こちらは嬰ハ短調、緊張感があり、長さも少し引き伸ばされています。ソ♯の多さに緊迫したものを感じます。同じところめがけて次々弓矢を打っているような、、、。または獲物のSOSでしょうか。緊急事態発生の雰囲気です。
30、32小節め5拍めソ♯は右手の親指で取ります。31小節め右手のオクターブソラソ♯は4番を使ってレガートを感じて弾きましょう。
33小節4拍めからはff ですが、無理のないように幅広く。保続音が左手に移り、右手が動くと、ますますアグレッシブに獲物を追いかけるような感じに聞こえます。ソプラノは結構頑張らないと聞こえません。34小節 右手4拍めは親指と中指でとったほうがクリアに聞こえるかと思います。ペダルもうまく踏みましょう。35小節め左手ド♯レド♯はレガートで。

37から44小節め 37小節4拍目からペダルは無しで。右手のオクターブは指でしっかり掴みながら小指も親指もしっかり出します。左手は単音のスタッカートからオクターブの連続になり不安定になりやすいですので気をつけましょう。おへその位置が左右にぶれないよう、真ん中にどっしり座っていましょう。この辺りのスタッカートも短くなりすぎないようにしましょう。43小節はバスのラインをよく聞いて。44小節めは内声をクリアーに弾きましょう。

fだと思うと、なんだか力任せに叩いているような気がします。そのくせあまり音は出ていないような・・・練習方法はありますか?

それは鍵盤を叩いてしまっていますね。叩いてしまう感覚がある人は、テンポを落とし、1音ずつ鍵盤を触ったのを確かめてから打鍵する練習をしましょう。
鋭く打鍵したら、指が弾んで上がってきますね。その時、上ではなく、次の音に向かって最短距離で移動します。次の音に触ったのを確かめてからそのまま鋭く打鍵、弾みを利用して次の音へ移動・・・この繰り返しです。ゆーっくりのテンポで大丈夫です。

それから、ここは親指中心で考えます。37小節から右手の親指のライン(もちろん親指のみで弾く)と左手を弾き、39小節でオクターブが出てきたら左も親指のラインだけにします。(もちろん親指のみで弾く)弾きにくいと思いますが、案外跳躍が激しくないことに気がつきます。
何回もやって弾き慣れたら、その感覚のまま、左右の小指も足しましょう。だいぶ安定すると思います。

45〜 50小節 ついに獲物を捕らえたのか、まだ追いかけているのか・・・どちらにせよ近い間隔でffは3つも書いてありますし、かなりエキサイトしているのはわかります。張り切りすぎて音割れないようにしましょう。

〈第3部〉50小節め〜最後

 

50〜56小節 50小節の頭に突っ込んで入らず、ほどよくルバートをかけられると、スケール大きく改めて入る感じがあり良いと思います。右手の連打はバランスを聞いて強さを決めましょう。52.53小節めはdim.  sf  p とありますので繊細に表現しましょう。sfは涼やかな感じがいいですね。こういう肩透かしのような、繊細なところにただの情景描写ではないのを感じます。
56小節目の4〜6拍ミレド♯は次のpに向かう感じで少しルバートをかけて歌いましょう。

ルバートっていい感じにするの難しいです。僕、ゆっくりしすぎちゃったり不自然になってしまうんですが何かコツはありますか?

うーん・・・考えられるのは、歌いたいところしかテンポの揺れを感じていないということです。例えば↑では50小節の4拍めに入るのを歌いたいので、4拍目の前に少しためてから入りますね。そうすると4拍目以降急いでテンポを戻すとちょっと不自然になります。溜めた分をだんだん戻すために、4拍目から5拍目も少しテンポを引き延ばす必要があります。
拍を細かくして歌う方法もありますがこれはまたの機会に・・・

   

61〜72小節め sfが3つありますが1つずつ強くしていきましょう。
64、65小節 25小節に対応していますが、dim.の場所が違います。64.65小節は強いままでいましょう。67、68小節は低い音域なのでpになるように気をつけましょう。
69小節めからのクレッシェンドは早くに強くならないように。冒頭の形ですね。

   

75〜最後  右手が常に16分音符の分散和音になります。小指は立て、親指の力はゆるめます。親指が外に向かないように気をつけましょう。機械的にならないよう、スラーの変わり目(変わる前と後)で少しルバートするとよいと思います。
左のホルンのパートはしっかり弾き、豪華な響きになるようペダルの踏み方と左右のバランスが大切です。(右手が高いので、ある程度しっかり弾いても大丈夫ですが。)

85小節dim.ていねいに。86小節頭でもう一度歌って響かせます。ここで右手に新しい和音(ラファ♯シラ)が現れますが、弾きにくいため滑らないよう気をつけましょう。ここから長いdim.なので早々に消えないようにdim.の具合を考えましょう。90〜93小節めの左手はペダルを踏んでいますがレガート(1番上の音をつなぐ)で。指番号を考えたほうがいいですね。お勧めのものは楽譜に上げておきました。
96小節ppから最後までu.c.が良いかと思います。

最後はあんなにどんちゃんさわぎだったのが嘘のように、森に静けさが戻ります。

ほ・・・

お読みくださりありがとうございました。
よろしければホームページもご覧ください。

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