モシュコフスキー 16の技術練習曲op.97より 第10番

コンクール

皆さんはツェルニーなどのエチュードは好きですか?

好きだと言う人は少ないかもしれませんね。

コンクールばかりで、ツェルニーに全然手をつけられてないなぁ、、、と言う方もいるかもしれません。
(ツェルニーを弾かずとも、ショパンのエチュードを弾くことはできるかもしれませんが、案外古典派のソナタで躓くことがあるように思います。)


私は幼少期はヤマハ音楽教室に通っていましたので、ヤマハの出版している練習曲集を使い、何巻かやった後ツェルニー30か40番に入ったと記憶しています。
頑張って練習してマルをもらい次の曲へ進むのがとても嬉しく、エチュードは割と好きだったのを覚えています。
比較的指が動いたのと、和音も単純で次の展開が予想できるような曲が多かったこともあり、譜読みがしやすく、ゲーム感覚で進めていた記憶があります。
コンクールの時はやはりその曲だけになってしまいますが、一段落して、エチュードが弾けると嬉しくなってガンガン進めたいと思っていました。
(今はテクニック系より歌う曲の方が好きです。)

それがツェルニー40番後半や50番入るとなかなか大変で苦戦したのを覚えています。やっとツェルニーがひと段落したと思ったら、先生はクラマービューローや、モシュコフスキーのエチュードをしましょうとおっしゃいました。(え、まだあるんだ!?と思いました。)
高校や大学になったら憧れのショパンのエチュード、リスト、ラフマニノフ、ドビュッシー、スクリャービンなど・・・ここまで来たらテクニックを磨くためのものだけではない感じですが、エチュードは果てしなく続くのだなぁと思った記憶があります。

京都堀川音楽高校(私の時は京都市立音楽高校)に入学を希望したため、入試でモシュコフスキーのエチュードが出る可能性がある、と言うことでop.72のエチュードを数曲練習しましたが、美しい旋律、転調、ロマンチックな場面などもあり、こんなきれいなエチュードもあるんだなぁと大好きになったのを覚えています。
結局私たちの年は、モシュコフスキーではなく、クラマービューローの練習曲が課題に出ましたが、近年の堀川の入試ではモシュコフスキーのop.72から選ぶ形式なので、受験生の方と一緒によく勉強しています。

最近では、小学校高学年や中学生の部で、op.72より少し簡単なop.91 やop.97の練習曲集からコンクールの課題になるようなことがあり、そちらはあまり勉強したことがなかったので、生徒さんに教える前に私も勉強しようと思いました。
今回は中学1年生のfuari(ふあり)ちゃんと、op.97の中で個人的に好きな、第10番を取り上げてみたいと思います。

はじめまして!fuari(ふあり)です!ショパンのエチュード、いつになったら弾けるかなあ。

モシュコフスキーってどんな人?

モーリッツ・モシュコフスキー(1854〜1925)

プロイセン王国のブレスラウ(現ポーランドのヴロツワフ)に生まれ。ポーランド系のドイツ人。
幼い頃から才能を示し、ドレスデン、ブレスラウなどドイツ諸都市でピアノと作曲を学んだ後、1875年からはベルリン音楽院の教員として多くの生徒を教えました。ヨーロッパ中を演奏旅行してまわり、傑出したピアニスト、素晴らしい作曲家として名声を得ると同時に、指揮者としても一目置かれるようになりました。(今はピアノ愛好者でなければあまり知られていませんが、当時は大人気だったそうです。)
1897年にパリに移り住み、パリでもたくさんの生徒を教えました。ピアニストとしてだけでなく、教師としても優秀で、生徒の中にはラヴェル弾きとして有名なペルルミュルテールもいました。
作曲家としては、ピアノの小品をたくさん残している他に、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、交響詩、オペラなど大規模な作品も残しています。
ピアノ作品は彼がヴィルトゥオーゾピアニストであったことからも、巧みなテクニック、優雅な旋律を持ったサロン風のピアノ曲が多く、現在ではエチュードやタランテラ、火花 op.36-6、スペイン舞曲op.12がよく演奏されています。

エチュードはたくさん書いており、現在では華麗なテクニックが必要なop.72をはじめとして、op.91 op.97あたりがよく弾かれます。あまり弾かれませんが演奏会用練習曲、左手のための練習曲もあります。
ロマン派の時代はヴィルトゥオーゾがもてはやされた時代ですが、モシュコフスキーのエチュードはレベル的にも色々なレベルの学習者が弾くことを想定されて曲集になっていますので、技術を見せびらかすというよりは、学習用(ピアノ愛好家たちや生徒たちに、自作の練習曲を通して自分の演奏技術を習得させようとした)だろうと考えられます。熱心な先生ですね・・・
とはいえ、どの練習曲も軽快な雰囲気の中に旋律と和声の美しさが生きており、魅力的な作品集となっています。演奏の際も1つの作品として取り組んでいきたいですね。

16の技術練習曲op.97より 第10番 演奏のヒント

molto animato leggiero とても生き生きとそして軽やかに

1〜16小節め
分散和音で曲が進んでいきますが、規則的なアルペジオではなく、音階を含んだり、複雑なメロディラインで進行するところも多いため、様々な音程があります。十分に弾き込んで指の運びを慣れさせなければなりません。

1〜4小節は、特別難しい事はありませんが、とても素敵な出だしです。molt p ですし、冒頭から、悲しげかつ優しさのある雰囲気を出したいですね。
夜の海辺、寄せては返す波のような・・・

右手のラインはガタガタにならないように、親指は変なアクセントにならないよう常に柔らかく弾きましょう。指先も内側に向くように。音の進行方向に合わせたニュアンスをつけることも必要です。
3拍目から入るアウフタクトの曲ですから、必ず1、2と数えてから弾きますが、2〜3拍目と3拍目〜1拍目にかけて趣味よく、ほんの少しルバートをかけましょう。一音目にアクセントがありますが、趣としてはテヌート位かなと思います。
左手は、右手の旋律に寄り添った和音で。
ペダルは、会場や弾くピアノにもよりますが、ハーフペダル位がちょうど良いのではないかと思います。

5小節目の左手3拍目の和音は、6小節目の1拍目にレガートで入りたいので指番号を532とするのが良いと思います。


6小節目の右手は変化があり少し難しいです。まず肘が暴れないようにしましょう。右に張らないようにしたほうがいいです。

6、8、10、12小節の右手が難しいです。静かに弾きたいのに指が暴れちゃう・・・
どのような練習方法がありますか?

そうですね、何気なく綺麗に弾きたいところですよね。
まず6と8小節目は音符をただ均等に並べるのではなく、音の並びでグループに分けてみたいと思います。

3〜8小節

上の楽譜のように、グループに細かくスラーが付いていると思って練習してみてください。青色で示しました。
まず、テンポを落とし、スラーの1音めに小さなアクセントを付けます。スラーとスラーの間は少し切って弾きます。
手首が音の進行方向に微妙に動くのを観察し、こうやって動かすとやりやすいんだなとコツが掴めたら、アクセントをやめて細かいスラーが聞き手には無く聞こえるようにしていきます。(手首の動きは本当に小さくて大丈夫です。ぐるぐる回さないようにしましょう。)テンポも上げていきます。
6小節目はまだpなのを忘れないようにしましょう。

10、12小節は先程の2つの小節とはちがい、クレッシェンドの盛り上がった部分としてしっかりと弾かなければなりません。
下の楽譜のように拍の頭と裏にアクセントをつけて練習しましょう。

9〜12小節めは冒頭より高さが上がるので、少し明るめの響きで弾くと良いですね。  

13小節目は右手の1拍目でクレッシェンド、2拍目と3拍目はしっかり目に弾きたいので楽譜に書いてある指番号が良いでしょう。14小節目は2拍目の54という番号は、ちょっと難しいかもしれません。しかし、54とした方が滑りにくいので考えられた指番号ではあります。もしこの指番号を選択するなら2拍目に入った時点で親指を開いて先にシのフラットの上に乗せておくのが良いでしょう。
私は2451の方が弾きやすいのでそうしますが、45で滑らないように注意することと、2拍目のファ(人差し指)を少し鍵盤の奥で弾くと良いかと思います。
同様に15小節目の2拍目の4.5拍も滑らないように気をつけましょう。

15〜16小節目の左手の指番号はこのようにすると良いと思います。

 

17〜24小節 17小節目からは左手が16分音符になります。

ここの左が難しく、外したりかすれたりしてしまいます。どんなふうに練習したらいいですか?

17小節目は3度の音程を5432で取るのが難しく、指をどれぐらい開けばいいのか感覚を覚えることが必要です。

ゆっくりのテンポから付点のリズム、そして3連符を入れたリズムで練習すると良いでしょう。
18小節目は書いてある指番号でもいいと思いますが私は弾きにくいので主にドとファで1にする指番号を使っています。

21.22小節目は書いてある指番号で弾きますが、どうしても 弾きにくい人は5321 5321 1231もお勧めです。

それから左手が弾けない!という時は大抵右手にも問題があります。
17小節目から24小節目までは左手の難しさにばかり気を取られないで右手の和音にも気を配りましょう。右の方が主なメロディーです。
左手と一緒に和声を作るつもりで、しなやかにタッチします。右手の和音はすべての音をちゃんと積み重ねた上でソプラノ(オクターブ)を意識しましょう。17小節目はまだmpで、23小節めに向かって幅広くなっていくイメージで弾きましょう。
3拍めが短くならないように注意しましょうね。

23小節から24小節目に入るところですが、2つほど方法が考えられます。

楽譜に書いてある通り24小節目の頭を右手の3と5で取る人は、23小節目の3拍目は鍵盤の奥の方を弾き、24小節目の頭の右手を手前で弾くのが弾きやすいと思います。

また、24小節目の頭のファの#を左手の4で撮る方法があります。左手はファ♯ッッシシ♭ララ♭ソと弾くことになります。
この番号の良い点は、24小節目のソプラノのラが単音になるのでしっかりと出すことができ、1拍目に左手も弾くことで左手のリズム感を感じやすくなり、ルバートがかけやすくなると考えられます。(次の小節でとても弱くから始まらなければなりませんので、2から3拍目でほんの少しルバートをかける必要があります)

私は今は24小節目の頭を右でとっていますが、左手と分けて取ろうかなと考えています。

  

25〜51小節

30小節目でしっかりクレッシェンドし、31小節めでfになり、それが36小節めまで続きます。
24小節目にもfはありましたが、その時はすぐdim.になったので、こちらの方がこの曲の山場だと考えられます。
29小節目の3拍目から左もしっかりと太い音を出しましょう。この3拍目は絶対に急がないようにしましょう。
33、34小節めは3拍め左にアクセントがついていることから、私は3拍目もペダルを踏んでいます。
35,36小節は音を急いで詰めないで、幅広くしていくイメージで弾きましょう。左の和声を十分感じましょう。

  

38小節目から交差が始まり、両手で1つのメロディーを分担しなければなりません。

36小節目からの両手の交差や16分音符をなめらかに弾くのが難しいです。何か良い方法はありませんか.?

まず37小節目の左手の運びが難しいですね。これはどうにかして右手も使えないかなぁと考えたのですが、左手で全て弾く方法しか今のところ思い浮かびません。
左手の2拍目の裏の4番の指をしっかり立てることと、3拍目にルバートをかけて絶対に急がないようにすると少し弾きやすくなると思います。
交差の時は両手や両手首が当たらないように腕の高さと鍵盤の弾く場所を変えるのが大事です。
38小節目の高さはおそらく左手が上、右手が下の交差ですね。
右手は肘を体に引きつけて鍵盤の手前側で弾くように心がけましょう。左手は腕から少し高めに構えて鍵盤の少し奥目で弾くようにしましょう。左の肘は少し左に曲げていて(くの字)、38小節目の一拍目を弾いたら肘から2に向かってミ♭に向かって飛ばすようにします。

それから39小節目の左手は書いてある番号だとたくさん回さなければならずきれいに弾くことが少し難しいかもしれません。私は2拍めのファを3ではなく4で取り、3拍目のドを右手でとります。その際浅めにペダルを踏むのも良いと思います。

37小節目はmp、41小節目はpになりますので、37小節目はあまり弱々しくならないようにしましょう。
また41小節目の2拍めくらいから徐々にu.c.をするのも手かなと思います。全部踏まず半分位でいいかもしれません。慎重に踏んでください。

45〜51小節

45、46小節目の2拍は左手が交差しますがファの#を短く(シ♭だけ残す)弾くとソプラノがレガートに聞こえます。47小節目から左右広がっていきますがおしゃれな感じでdim.しましょう。
49小節の休符はブツッと切るのではなく次の和音に向かって余韻を聴きながら。
最後は肩の力を抜き、ピカルディー終止の温かみを感じて弾きましょう。

※ピカルディー終止・・・短調の曲が、同主調の主和音で終わること。この曲はト短調なのでト長調で終わります。

  

素敵な海辺で波の音を聴きながら・・・

  

お読みくださりありがとうございました。
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