カバレフスキー ソナチネ Op.13-2 第3楽章

コンクール

6月になりました。なんとなく梅雨らしくなってきましたね。最近、滋賀教室の庭の木に鳥の巣ができました。毎朝チェックすると、なんと1つずつ卵が増えています!!最近の楽しみです。

ピアノはというと夏のコンクールシーズンが近づいてきました。

生徒さん達は暗譜もして「さあもっと深めるぞっ!」と思っているはずですので、私も改めて曲を整理して考え、まとめてみたいと思います。
文字でどれくらい伝わるかはわかりませんが、少しでも参考になれば嬉しいです。
(※あくまでも個人の解釈です。)

今日はカバレフスキー のソナチネ Op.13-2 第3楽章 を取り上げてみます。

しっかりとしたテクニックでパリっと華麗に弾き切りたい曲ですね。

カバレフスキーってどんな人?

ドミトリー・カバレフスキー(1904〜1987)


ロシアのサンプトペテルブルグ生まれ。
父親は数学者で、息子にもその道を目指させたいと考えていましたが、本人は幼い頃から絵画や音楽に興味を持ち、ピアニストを目指しました。ロシア帝国からソ連への過渡期で革命が激化しつつある1918年(14歳)に、家族でモスクワに移り、スクリャービン音楽学校でピアノを学び、その後1925年にモスクワ音楽大学で作曲とピアノの勉強をしました。卒業時に作曲したピアノ協奏曲が認められ、作曲家となりました。
第二次世界大戦後の1948年、国が前衛的な曲を排除するという芸術統制(ジダーノフ批判)が行われ、ショスタコーヴィッチやプロコフィエフ、ハチャトゥリアンらは苦しめられることになります。音楽家にとっては厳しい時代でした。
しかしカバレフスキーは、社会主義リアリズムを象徴する音楽家として平易で大衆受けする曲をどんどん書いていったので、国から目をつけられることもなく、むしろ国の発展に寄与した音楽家として高く評価されていました。
また、子供の音楽教育に熱心に取り組んでおり、ソ連の音楽教育界の重役を歴任していきます。

現在ピアノ学習者の間では、今回取り上げるソナチネop.13(特に1番)や、子供のための楽曲がよく演奏されていますが、交響曲や協奏曲、歌曲、カンタータ、オペラなど幅広い分野の作品を書いています。

ソナチネop.13-2は1933年に作曲されています。母校であるモスクワ音大で教鞭をとりながら作曲を始めた頃の作品です。同時期に書かれた曲としては、交響曲を3曲、歌曲などが挙げられ、大規模なものから小規模なものまで、さかんに創作活動を行っていたことがわかります。

ソナチネOp.13-2 演奏のヒント 

実際に音を聞かなければ詳細は分かりませんが、文字で伝えられることを書き出したいと思います。

ではスタート!!

ト長調  4分の4拍子  vivace

〈冒頭 1〜5小節目〉
主和音を気持よく鳴らし、冒険のはじまりです!わたしが思い浮かぶのはトムとジェリーのような面白い追いかけっこのイメージです。

主和音と半音ずつ上下に開かれた和音(ト長調の属九和音の根音省略、第5音上方変位の和音です。)の付点のリズムをリズミカルに。指先をしっかり立て、指先の神経に集中し、華やかな音が曇らないようにしましょう。指の上げ下げが曖昧にならないよう意識します。16分音符のソプラノのミは、小指で弾いた方が響くようなら5で弾きましょう。
タイで繋がっている3拍め頭のよく感じましょう。
ペダルは長く踏む指示ですが、考えないと、あまりにも濁りすぎる可能性があります。

2小節めは右手はカリっとした音色、左手は安定した8分音符のリズムで、鍵盤の跳ね返りや響きを感じまししょう。右手は4からなので弱くなりがちですが、しっかり指を立てて鳴らしましょう。
3小節め以降の右手音階の強弱をしっかりつけます。基本的に親指は軽く弾きます。左手もクレッシェンドに協力しましょう。ペダルはなくて良いと思いますが、踏む場合は音の粒がなくならないように浅めにしましょう。

〈6.7小節目〉
もう一度、冒頭を繰り返します。
2回目なので少しニュアンスを変えてみましょう。7小節目弱くしても良いと思います。

〈17小節目〉
ト短調に転調。
ソプラノのレソドシ♭ラソは、1楽章のテーマがそのまま使われています。1楽章から通して演奏した時、1曲としてのまとまりが感じられますね。丁寧に扱いましょう。
直前はフォルテでここからsubito pなので、突っ込んで入らずに、ほんの一瞬の間(呼吸)があるといいですね。
左手は横のラインを聞きつつ、1音1音が生きているようによく聞きましょう。
20と21小節目、22と23小節目は同じ弾き方にならないように強弱を工夫しましょう。

〈27小節〜〉
バスに1楽章のテーマが現れます。

やられっ放しだったトムが一瞬優勢になる感じでしょうか。

弾きにくいですが、不安定になってはいけません。左肘は左に張らないように注意すると良いです。
ゆっくりのテンポで、右手と合うところを確認しながら練習しましょう。
もちろんバスを浮き立たせますが、全体的な音量はメゾフォルテで、それほど強くありません。右手の響きも心地よく鳴らせるよう、1和音ずつよく聞きましょう。

〈42〜53小節目〉
ホ短調で新しいテーマが現れます。(アルト声部)小節に向かってクレッシェンド、続いてバスにテーマが現れます。
49小節目からは新しくソプラノの声部にテーマが現れます。そのソプラノをしっかり弾き、残り2声部は適切な強さで小気味よく弾きましょう。

〈61〜62小節〉
ここの左手のラシ♭ドレ ミ ファ ファ♯ でぐんとクレッシェンドしたいので、それまでに強くなりすぎないようにしましょう。

 

〈62〜68小節〉
まだホ短調のテーマですが、やっと本格的にフォルテとなります。張り切っていきましょう。左手もしっかり打ち出していきましょう。

〈73小節〉
ホ短調で、はじめのテーマに戻りました。勢いよく駆け上がってきて、1拍目頭の付点8分音符はほんの少し長めに感じましょう。このあと78小節からト長調のテーマが現れラストに向けて畳み掛けていくので、ホ短調の時点ではまだ余裕のある強さにしておいてください。

〈85小節から〉
はじめのソだけが強く、両手ともすぐに弱くしてからクレッシェンドです。親指は軽やかに。右手を左手が追いかけて、気持ちよく駆け上がりましょう。
油断してジェリーが追い越されませんように。

全体を通して、右手のパリッとした音や技術はもちろん、安定感のあるリズミカルな左手が必要です。左手をよく練習しておきましょう!

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